2021.12.25 三窪高原~大菩薩の湯
三窪高原~大菩薩の湯
期 日:2021.12.25
参加者:L佐藤、上野、得津(記録)
タイム:新宿6:08─京王線─6:56高尾7:06─中央本線─8:14塩山駅 タクシー 8:55柳沢峠 9:15登山開始 9:57柳沢ノ頭─10:28ハンゼノ頭40 10:58昼食11:30─12:00柳沢ノ頭─12:30林道交差─13:09高芝山東峰─その後2度のルートミス─15:45送電線鉄塔─16:20介山記念館─16:40大菩薩の湯(登山終了) 入浴後タクシーで塩山駅に行き付近で夕食
2021年4月、転勤で約3年ぶりに東京に戻って来ました。あれから9ヶ月。コロナ禍で会社からは不要不急の行動を自粛せよと言われ、僕自身は、三重から北区、北区から世田谷区、そして来年1月早々には、大田区への引っ越しを控え、また日常生活は、毎朝4時40分に起床し、世田谷から海浜幕張まで通勤、土日は大崎のスタバで資格試験の勉強するという時間的、精神的余裕が全く無い日々を過ごしています。
コロナが落ち着き始めた9月以降も、山に行きたい気持ちを抑えて、ひたすら受験生の生活。もう何年、我慢の生活が続いているだろうと思うと嫌気が差してくるのですが…。
唯一の楽しみは、大崎の大衆酒場でひとり味わう「孤独のグルメ」。いわしフライとカキフライが格別に美味しい!先日、佐藤さんと上野さんと誘ってこの店で一杯やりましたよ!
12月25日は久しぶりに山行に参加する事が出来ました。当初予定は山小屋泊で金峰山でしたが、僕の人間ドッグの再検査の都合で、日帰り登山に変更していただきました。(恐縮です)
今回の山は、奥秩父南部、大菩薩嶺の西に位置する三窪高原と鈴庫山に登り、大菩薩の湯に下山する計画です。
塩山駅から登山口のある柳沢峠まではタクシーで。途中、雪を被った富士の雄姿に感動。青梅街道を北上し、9時前に柳沢峠に着きました。
登山口の駐車場には昨夜の降雪が5㎝程積もっていました。 駐車場では、女性が一人、登山の身支度をしていました。誰もいないと思っていたので意外でした。彼女は金髪にピンク色のセーラー服のような服装と赤い羽根の付いた茶色のベレー帽。
「山でコスプレ・・・?」多少の違和感を覚えましたが、しっかりとアイゼンを履き、雪山慣れした様子に、今時のお洒落な山ガール、なかなかやるなと見ていました。
予報に反して朝から快晴。この時期特有の山の静けさと冷気を耳に感じながら、薄く積もった雪の上を歩くのは本当に気持ち良かった。久しぶりの雪山。いつ振りぐらいだろう?
今日の先導者はコスプレの山ガール。しっかりした足取りで僕たちをぐんぐん離して登って行きました。佐藤さん曰く、「女性一人で雪山に来るくらいだから地元の山慣れた人では?」との事。
1時間足らずで稜線上にある柳沢の頭に着いた。富士山が見えたが、さらに20分程先のハンゼの頭の方が、展望が良いらしく、ここはスルー。12時、僕たちは今日の目的地の一つである三窪高原の展望台に到着。小高く開けたハンゼの頭からは申し分の無い展望が広がっていました。富士山、鳳凰三山、南アルプス、甲武信、金峰…。久しぶりに見る山々にしばし感動です。
ベンチには私たちの先導者、山ガールがお湯を沸かしていました。さすがに若い女性は登るのが早い!そして山を自分なりに楽しんでいる!上野さんがいつの間にか、いなくなったと思ったら、その女性と楽しく会話をしている。「さすが上野さん、抜け目ないな…。」と感心していると、上野さんが戻って来るなり「男だよ、男!」と興奮を抑えながら小声で僕に言った。彼女はいわゆる女装した中年男性だったのです。しかも骨太で体格の良い男性!「道理でしっかりと歩いていると思ったよ」と上野さん。僕も驚きましたけど、あの健脚ぶりは、なるほどと納得。
上野さんは驚きを彼女に悟られないように、彼女に写真を依頼したとのこと。彼女も嫌な顔一つせず、僕たち三人の写真を撮ってくれました。彼女は、コスプレ以外はごく普通のおじさんでした。
写真を撮り終えると彼女は、僕たちの存在など全く気にせず、日清のカレーヌードルを食べる自分自身を自撮りし、山の上の時間を楽しんでいました。「やっぱり彼女は今時の山ガール! SNSにでもアップするのかな??」
僕たちは彼女に遠慮して、少し下った所に陽だまりの場所を見付け、昼休憩にしました。今日の目的はゆっくり登山。雪山を味わう登山。三窪高原はもっと雪が積れば、手軽に雪山の醍醐味が味わる山でしょう。陽だまりの休憩地は心地よく、素敵は山時間をたっぷりと満喫しました。お蔭で時刻は13時過ぎ、鈴庫山に向かうにはちょっと厳しいかなと言う時間です。
佐藤さんが、状況次第で複数の下山ルートを用意していましたので、三人で相談し、「ちょっと早めに下山して大菩薩の湯でゆっくりしましょう!」という事に。と言うことで、今回は鈴庫山には登らず、一旦、柳沢の頭に戻り、そのまま南進し大菩薩の湯に下山するルートを取る事にしました。
最短で下山出来るルートとは言え、柳沢の頭から先は、地図読みで尾根筋を辿る面白さと、早く下山し温泉でゆっくり出来る、良い所取りのルートでもあります。
柳沢の頭から先は古い地図では破線ルート、現在地図では破線の記載がありません。分かりやすいなだらかな尾根は歩きやすく、途中の林道を過ぎ、三角錐の形をした高芝山を右手に見ながら、緩やかに登り返し、西側に巻き道を取りながら、順調に高度を下げて行きました。あまりに順調で油断が生じたのか、1300m付近で地図の地形とは明らかに違と急傾斜になっていました。僕たちが目指す、地図にある鉄塔の方向だけは正しいのですが、周囲は山に囲まれているため自分たちが居る場所が特定出来ませんでした。1400mの稜線まで戻り、どうやら間違えて下った地点の少し南に進んで見ると、主尾根の下山ルートを見付ける事が出来ました。
道迷いは、尾根を行き過ぎ、下山ルートに気付かず通り過ぎてしまうケースと、間違って手前の尾根を下るケースが多いと言いますが、今回は手前の間違い尾根を下ってしまったケースでした。でもこの間違いは、ある意味、地図読み山行の楽しい部分、想定の範囲内です。
僕たちは、今度こそ細心の注意を払って、正しい尾根を下り始めました。地図で方向を再確認し、見えてくるはずの鉄塔の方向に下り始めました。今度は歩き始めてすぐに鉄塔が前方に見えました。
「あっ、鉄塔だ!良かった!」僕は鉄塔に向かって下山している事を確認し、ほっとしました。
しかし、また100m程下った所で急傾斜が現れたのです。今度こそ細心の注意を払って下って来たので、どこで間違えたか全く心当たりが無く、それだけに不安と戸惑いが大きくなっていました。務めて冷静に周囲を見渡すと、下山方向に見えていたはずの鉄塔が、いつの間にか西にある小さな尾根上に見えていました。今自分たちがいる地点からその鉄塔までは、直線で40、50m程度。すぐに着けそうな気がします。僕は「さっきまで正面に見えていた鉄塔が、どうして西側に見えているのだろう?」と思いながら、その時は不思議でした。高度計を確認すると、今いる地点は1300m。地図にある鉄塔は1203m。なのに、今いる地点から見上げた所に、その鉄塔が立っている。やっぱりこれはおかしい。佐藤リーダーは「だぶん、今見えている鉄塔は1203mの鉄塔では無いんだよ。」と今見えている鉄塔の位置付近を地図にペン先で示しながら、「正しい鉄塔はあの山の向こうにあるはずだ」と方向を指で指した。でも僕は地図に記載された鉄塔こそが、今見えているほんのわずか30、40m西側の尾根上の鉄塔だと思いました。なぜなら、鉄塔までの尾根は緩傾斜で地形図と合っていたからです。
位置を確認するために、僕たちは尾根まで再び登り返しました。明らかに急傾斜を下って来たので、登り返すのも一苦労でした。もう一度地図を拡げ、正しい下山ルートと、正しい鉄塔がどこに位置しているのかを三人で確認しました。
佐藤さんは、改めて正しい下山ルートと、現在地、そして今見えている西側の鉄塔の位置を、それぞれペン先で地図に示してくれました。 しかし佐藤さんが示したルートは、今僕たちがいる地点からさらに東側でした。つまり、今見えている西側に鉄塔は正しい鉄塔では無く、全く反対方向にある鉄塔という事になります。 僕は現状を理解できず、何だかきつねに騙されたような気すらなっていました。でもやっぱり僕は、今いる地点からほんの僅か100m程先の西側尾根に見えている鉄塔が方位的にも地形的にも正しいと思いました。佐藤さんは「東に行こう」と言う。
僕は「西に行って確かめたい」と言う。どうしても僕は見えていないものよりも見えているものを正しいと思ってしまう・・・。
僕は佐藤さんに「今見えている鉄塔は一体何なのですか?地図のどこにあります?」「正しい鉄塔が、ここから見えていないのはおかしく無いですか?」と質問しました。時刻はすでに15時を過ぎていました。これ以上もたもたしていると本当に日没の下山となります。
あんまり僕が納得しないものだから、佐藤さんもこれ以上ルートを探すのはリスクと判断し「じゃあ、ナビで確認するとしよう」という事になりました。ナビで確認すると、佐藤さんの言った通り、正しいルートも鉄塔もさらに東でした。つまり、またもや正しい下山ルートの手前で間違い尾根を下っていたのです。確かに間違った尾根から少し東に進むと、正しい尾根の下りがありました。
そして少し下ると、今まで見えなかった鉄塔の頭が見えて来ました。鉄塔はだんだん大きくなり、見渡せる場所まで標高を下げると、いくつかの鉄塔とそれに架かる送電線が見渡す事が出来ました。正しい鉄塔は地図と同じ1203mに位置していました。そして西側の尾根に見えた鉄塔はかなり小さくなって西側に見えていました。ようやく目指す鉄塔に辿り着き、僕は安堵と同時に、今日の山行が思いもかけず充実した登山となった事を実感しました。 時計を見ると15時45分、何とか日没ぎりぎりに下山出来そうです。鉄塔の向こうに、西陽が射し込み、淡いオレンジ色をした富士山が見えていました。
下山後は、大菩薩の湯で冷えた体の芯を温め、塩山駅ではラーメンと餃子、そして生ビールをジョッキで乾杯し、今日の山行を振り返り、帰路に就きました。
地図読みにおいて、自分が見えるもの、見たものだけが正しいと思い込んでしまう視野の狭さ、隠れている鉄塔があることを想像する事が出来ない洞察力の無さに大いに反省です。
(上野 談)
今回はいつもの地図読みより難しかった。間違い尾根との判別が付きづらく、下って初めて間違いに気付くという感じでした。その場面、場面で得津君がサブリーダーとして、皆に励ましの声を掛け、間違ったら辛くても登り返すという鉄則を守る姿を心強く感じました。
今回の間違いの原因は、自分たちが見えている鉄塔が地図上の正しい鉄塔だと最後まで思い込んでいた事に起因しますが、ぎりぎりまで自力で下山する事で、地図読みの力量も養われていくと実感出来た山行でした。